法人破産 [事例5]

従業員の給与の立替払制度の利用を認めてもらった事例

電気機器の設計
債務整理方法借金総額
破産 3500万円 ⇒ 0円

背景

本件の会社は、電子機器の設計業を営んでいた会社です。
当初は、設計業務だけを行っていましたが、幸いにも業績が伸びていき、次第に、顧客へ製品を納入するだけでなく、納入した製品の保守管理サービスまで行うようになりました。そのため、受注が増えて顧客先の企業も増えていくと、製品の保守管理を担当する従業員もそれなりの数を確保しておかなければならず、多い時で最大20名の従業員を雇用していました。しかし、昨今の電子機器の進歩は目覚ましく、保守管理サービスに求められる難易度も上がり、従業員の業務負担も大きくなっていきました。そして、遂には、会社の業務負担に耐えられずに退職する者も出てきてしまいました。そこで、優秀な従業員を確保する必要に迫られ、金融機関からの借入を行うことによって、人件費負担を補てんしました。

そして、何とか優秀なスタッフを確保することに成功したのですが、それも束の間、何と、会社創業以来の取引先であった大手企業が、電子機器部門からの撤退を決め、本件会社との取引を停止することとなってしまいました。本件会社の社長であるAさんは、別の大口取引先を見つけようと奔走しましたが、結局新たな取引先を見つけることはできませんでした。そして、会社の売上よりも経費の方が高くなる状態が続いていたことから、Aさんは、断腸の思いで、従業員を解雇して会社の営業を停止することを決意し、実行しました。その後、Aさんは、会社の債務を整理するために、当事務所へご相談にいらっしゃいました。

対応

本件は、会社の営業を停止させ、営業所などの賃貸借契約の解約も済んだ状態で、当事務所でご依頼をお受けした事案です。そのため、特に支障なく破産申立が可能であると認識していたのですが、ご依頼を受けた後、しばらくしてから、実は、元従業員に対する給料の未払いが発生していることが判明しました。本件会社では、当事務所でご依頼を受ける約5か月前に、従業員を解雇していました。そのため、この給料未払い分について、立替払い制度が利用できるかどうかが問題となりました。

未払給与の立替払い制度というのは、当該従業員の退職日から6か月以内に、①会社が破産の申立を行うか、②労働基準監督署に倒産認定の申請を行うか、いずれかの要件を満たせば、当該制度の適用が認められ、給与未払い分の「一部」(※全部ではないので注意が必要です)について、国が代わりに支払ってくれるという制度です。
しかし、本件では、ご依頼を受ける5か月前に既に従業員を解雇していたので、上記制度の適用期限までは約1か月しかない状態でした。そのため、当事務所の方からAさんに対しては、従業員の方に、速やかに立替払制度の申請をするために、労働基準監督署へ相談に行くように案内をしました。他方で、迅速に会社の破産申立ができるように、Aさんには事情を説明して、早急に破産申立に必要となる資料を収集提出するように指導しました。

その後、元従業員の方は労働基準監督署へ相談に行きましたが、監督署がなかなか相談受付をしてくれなかったために、会社の倒産認定が受けられませんでした。そのため、当事務所において、大急ぎで必要書類等を揃え、裁判所に破産の申立てを行いました。結果的に何とか6か月の期限には間に合いました。

結果

従業員思いのAさんの協力もあって必要書類の収集提出がスムーズに進み、従業員の解雇日から6か月ギリギリではありましたが、何とか、裁判所への破産申立ができました。その結果、上記未払給与の立替払制度の適用を受けることができました。そして、元従業員の方は、破産管財人を通じて、立替制度の利用が認められ、未払給与の一部の支払いを受けることができたのです。

また、会社の破産手続についても、債務超過に至る経緯や資産の処分状況などに問題はなく、また破産申立の時点で会社の資産がほとんどなかったこともあり、第1回目の債権者集会で無事に終結となりました。その結果、会社名義の借金3500万円は0円になりました。

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