「窃盗罪で逮捕されてしまった…」不起訴になるにはどうすれば良い?
軽い気持ちで万引きを繰り返し、ついには逮捕されることに…。
実は、そのような人は少なくありません。実際、窃盗で捕まる人は年間10万件以上いるという統計結果が出ています。
「盗み」は誰もが手を染めやく、何度も繰り返し犯しがちな犯罪でもあります。
実際に逮捕されてしまうと、示談がまとまらない限り起訴が行われ、そのまま有罪になってしまう可能性が高くなっています。そうなると、前科がついて今後の社会生活に影響を及ぼします。
逮捕されたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談するのが鉄則です。
今回は、窃盗罪で逮捕されてしまった場合の罪の重さや量刑相場、示談等の対処方法を解説します。
このコラムの目次
1.窃盗罪で捕まるとどうなるか
まず、窃盗罪で捕まるとどんな罪に問われ、どのくらいの量刑になるのでしょうか。
(1) 窃盗罪の量刑
10年以下の懲役または50万円以下の罰金
皆さんは、「窃盗」と聞くと、具体的にどのような犯罪行為をイメージしますか?
多くの人が想像するのは、「万引き」ではないでしょうか。子供が遊び半分でスーパーや雑貨店などで物を盗んできてしまう、というイメージです。
最近なら、万引きGメン等のメディアの情報から、高齢者のスーパーでの万引きが問題になっているという回答も出てくるかも知れません。
確かに、万引きは窃盗の中でも比較的メジャーな犯罪です。しかし、実際には、自転車やバイク、車等を盗む「乗り物盗」や、誰もいない家や店舗に忍び込み窃盗を働く「侵入盗」などの類型もあります。
そして、これらは全て同じ窃盗罪にあてはまり、仮に逮捕されてしまった場合には、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」(刑法235条)が課される可能性があります。
窃盗罪は軽い犯罪のイメージがあるかも知れませんが、実際は懲役刑も課される可能性もある重罪なのです。
窃盗罪の時効は、犯罪行為から7年です。7年間は警察が捜査を行い逮捕することが可能と言えます。
(2) 窃盗罪の発生件数と逮捕数
平成29年度の窃盗犯検挙総数は10万9238件であり、かなりの数の窃盗犯が逮捕されています。
平成25年度は13万8947件だったことに比べると、検挙数は徐々に少なくなっていますが、依然多い犯罪の1つといえます。
また、認知件数で見てみると、平成29年度は、65万5498件が報告されています。
窃盗罪として報告があった件数のうち、約6分の1が逮捕されているのです。
(3) 窃盗罪の量刑相場
初犯でも起訴される可能性はある
初めて窃盗罪で逮捕された場合、多くの人が「初犯だから注意されるだけで終わるはず」「不起訴になるはず」という見当をつけるかも知れません。
しかし、初犯だからといってかならず不起訴になるとはかぎりません。行為態様や盗んだ額によっては、初犯でも起訴され実刑が課せられる可能性があります。
窃盗罪で起訴されるか否かは、窃盗した物の金額の重さや、被害者の処罰意思にも影響を受けます。被害金額が大きく、住居侵入罪などの他の犯罪も含まれるとする場合には悪質と判断され、起訴の可能性も高くなります。
また、金額が少なく行為態様が悪質と言えない場合でも、被害者との示談が成立しない場合には起訴されてしまう可能性は否定できません。
仮に起訴されてしまった場合には、ほぼ確実に有罪となり、10年以下の懲役が科される可能性があります。執行猶予がついたとしても、前科となることは避けられません。
軽い気持ちで窃盗すると、取り返しのつかない結果となってしまう可能性があるのです。
このように窃盗罪で起訴されると、初犯でも懲役の可能性があります。起訴される前に、的確な対処を取る必要があります。
2.窃盗事件では示談の成立が最重要
次に、不起訴や減刑に有効な示談の基本と、示談の方法についてご説明します。
(1) 窃盗罪における示談
まず示談とは、事件に関する問題を当事者間で合意により解決する手段を指します。簡単にいうと、「話し合いを行い、損害賠償を支払うことで解決しましょう」ということです。
窃盗事件に関していうと、示談は起訴・不起訴が決定する前にまとめるのが有効と考えられています。というのも、示談をまとめることが不起訴や減刑に繋がると言われているからです。
「示談は不起訴のために必ず必要」とまで言うことはできませんが、示談が成立していれば、不起訴になる可能性は高くなると言えます。そのため、できる限り早いうちに、被害者との間で示談をまとめる必要があります。
示談が影響し、不起訴となれば前科はつきません。
(2) 示談の方法
当事者だけで示談成立は不可能
実は、示談には必ず弁護士が必要という訳ではなく、当事者同士でも可能です。具体的な方法としては、加害者側が被害者に連絡を取り、交渉を開始します。示談で必要な謝罪、示談金の額等を決定し、書類にまとめ、支払いを行い、両者がサインすれば示談は成立します。
もっとも、当事者同士での示談は現実的ではありません。というのも、被害者が加害者と連絡を取ること自体を拒否する可能性があるためです。
窃盗行為に対し、被害者が「許せない」と怒りを募らせている場合は、示談交渉自体を拒否されてしまう可能性もあります。強行に示談をもちかけたら、強迫行為とも受け取られかねません。
そのため、示談交渉のおすすめは、間に第三者である弁護士を挟むことです。弁護士であれば、被害者も「話してもいい」と言ってくれることがあります。冷静に交渉を行い、早期示談成立となる可能性も高くなるでしょう。
また、当事者同士では、書類に示談の内容をまとめても内容が不十分になってしまう可能性があります。内容を正確なものにするためにも、プロである弁護士に示談交渉を任せることをおすすめします。
刑事事件は時間との勝負であり、逮捕から勾留決定までは約3日、勾留から起訴まで早ければ1ヶ月程度とそれほど時間はありません。早期釈放をご希望の場合は、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。
3.示談が不成立になったらどうなる?
最後に、示談が不成立になってしまったケースについて説明します。
示談以外に起訴を回避する方法はあるのでしょうか?
(1) 示談が不成立だと起訴の可能性が高くなる
刑事事件で示談をまとめられない理由はさまざまです。被害者の処罰感情が強いケース、示談金額・内容に納得できないケース、そもそも交渉に応じてくれないケースなどがあります。
どれだけ交渉を続けても、起訴・不起訴の決定までに示談が成立しなかった場合は、残念ながら起訴の可能性が高くなります。
起訴が決定した後でも示談交渉は続けられますが、最後まで成立しなかった場合は、情状に影響します。本来なら執行猶予判決のはずが実刑判決になる、執行猶予の年数が長くなる、量刑が重くなるなどのデメリットが考えられるでしょう。
これら以外にも、示談が成立しない場合は逮捕後に勾留請求が行われ、釈放までの期間が長くなってしまうことがあります。この場合、生活への影響も大きくなってしまうでしょう。
具体的には、病欠と申告していた学校や会社に本当のことを話さなければいけなくなります。刑事事件を起こしたことは、会社を解雇される理由や大学を停学・退学にされてしまう原因にもなりかねません。
起訴が行われた場合は、ほぼ確実に有罪となります(そもそも、検察官は有罪の証拠がないものは立件しません)。有罪となった場合は、仮に執行猶予がついたとしても前科となり、今後の社会生活に影響を与えます。就職の際に苦労する可能性もあります。
このように示談が不成立になると、加害者にとっては、「起訴の可能性が高まる」、「執行猶予がつかない可能性が出る」、「実刑の可能性が出る」、「社会生活への影響が出る」など、さまざまなデメリットが発生する確率が高くなります。
(2) 贖罪(しょくざい)寄付と供託
示談以外にも、不起訴の可能性や執行猶予判決を高める可能性のある方法があります。それは贖罪(しょくざい)寄付と供託という方法です。
贖罪寄付とは、日弁連や弁護士会が行っている制度であり、法的支援を必要とする人々のための寄付のことです。
犯罪を償う気持ちをもって寄付を行うことにより、証明書を発行してもらえます。この証明書により、犯罪の情状がよくなり起訴や量刑に影響を与えるという仕組みです。
供託は、民法494条が規定する民事上の金銭の寄託方法の1つです。刑事事件でも、被害者がどうしても示談金を受け取らないという際に、法務局に示談金を預けることができます。
供託を行うと、被害者に通知され被害者がいつでも受け取ることが可能な状態となります。供託を行うことにより、情状が有利となり、処分を軽くする方向に働くことがあります。
どちらを選択するのかについては、慎重に決断する必要があります。賠償金額相当を支払う経済力がなく、少額しか支払えないという場合は、供託を行っても逆効果となってしまう可能性があります。
少しの金額しかないが、罪を償う気持ちを示したいということであれば贖罪寄付を行う方法をとることも考えられるでしょう。実際の判断は、弁護士とともに検討すべきです。
4.窃盗事件で逮捕されたら弁護士に相談を
ご説明した通り、窃盗罪は懲役10年の可能性もある重い犯罪です。軽い気持ちでやってしまったことが将来にわたり影響する可能性があります。
現在、逮捕されていなくても、いつか逮捕されてしまう可能性は否定できません。不安がある場合は、専門家である弁護士に相談しましょう。
また、ご家族が逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士にご依頼ください。対応が早いほど不起訴のためにできることも多くあるため、早期釈放が望めます。
ご説明した通り、刑事事件はスピードが大切です。将来への影響を少しでも少なくするためにも、最善の策を一緒に考えましょう。
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