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交通事故の弁護士費用特約の基本と注意点

交通事故の弁護士費用特約の基本と注意点

交通事故で弁護士に依頼したときの弁護士費用を保険会社が支払ってくれる「弁護士費用特約」は、2019年現在、非常に幅広く利用されるようになりました。

とはいえ、交通事故に遭わない限り、一般の方が、自分が加入している弁護士費用特約の内容を細かく調べることはないでししょう。交通事故に遭ってしまったあと、利用できないか調べることがほとんどだと思います。

弁護士費用特約はデメリットといえるものがない便利な制度ですが、注意しなければ、十分なメリットを得ることができないおそれがあります。

そこでこのコラムでは、弁護士費用特約の基本的な仕組みや内容・弁護士費用特約を利用する際の主な注意点を説明します。

1.弁護士費用特約の基本知識

弁護士費用特約とは、交通事故で弁護士に依頼をした際の弁護士費用を、保険会社が支払ってくれる保険の特約です。
この特約を利用できれば、2019年現在の相場としては、「法律相談費用を1年間10万円まで」「その他の弁護士費用を300万円まで」保険会社が支払ってくれます。

この特約の利用により保険料が上がることはありません。

(1)弁護士費用特約を利用できる可能性のある交通事故

契約内容次第ですが、2019年現在の保険会社の商品を確認すると、弁護士費用特約を利用できる可能性のある交通事故は、自動車同士の事故に限りません。

  • 歩行者としての事故
  • 同乗者としての事故
  • 加害者になったが相手にも注意義務違反(過失)がある事故
  • 自転車事故

以上のような事故でも利用できる場合があります。

ただし、加害者になった場合(詳しくは後述)や自転車事故については、契約内容や具体的事情次第で利用できないことがあります。

(2)弁護士費用特約を利用できる可能性がある人

事故の内容だけでなく、弁護士費用特約を利用できる可能性がある人も、保険サービスの拡充によって広がっています。

契約者の配偶者・契約者の子ども・契約者の同居の親族も利用できる場合があります。

特に、たとえ別居して社会人となっているお子さんについては、未婚であれば、ご両親が加入されている保険の弁護士費用特約を利用できるとされていることがあります。

【弁護士費用特約の種類】
弁護士費用特約は、保険会社が日本弁護士連合会(通称「日弁連」)と協定を結んでいるかどうかで、その内容が大きく変わります。
協定を結んでいる保険会社の弁護士費用特約付き保険は、「権利保護保険」とも呼ばれています。つまり、権利保護保険は、日弁連が運営している、日弁連リーガル・アクセス・センター(通称「LAC」)が関与している保険です。
日弁連と協定を結んでいる保険会社は、「協定保険会社」などと呼ばれています。
協定保険会社の弁護士費用特約を利用すると、保険会社を通じて弁護士会から、弁護士の紹介を受けることができます。
しかし、必ずしも利用者に最適な弁護士が充てられるとは限りませんので、相手の保険会社との交渉に不満が大きい場合は、自分で交通事故交渉に長けた弁護士を探すことを積極的に検討しましょう。
また、種類により、弁護士費用の計算方法も異なることがあります。

では、次に弁護士費用特約の注意点を確認していきましょう。

2.注意点1:弁護士費用特約を使えない場合

弁護士費用特約は交通事故に遭ったらどんな場合にも使えるわけではありません。

(1)相手に過失がない場合

約款上、弁護士費用特約は、交通事故の損害賠償請求のために利用するものです。

こちらから相手の自動車に追突してしまった場合のように、自分にしか過失がなかった場合には、損害賠償請求ができないため、弁護士費用特約を利用することはできません。

(2)交通事故に遭ったときに弁護士費用特約に加入していなかった場合

弁護士費用特約が適用できるかどうかは、事故の発生時に弁護士費用特約を保険会社と締結しているかで決まります。

交通事故発生後に保険会社と弁護士費用特約を結んでも、弁護士費用特約は利用できません。

(3)被害者であっても重大な不注意など問題点があった場合

被害者になったからといっても、必ずしも弁護士費用特約が利用できるとは限りません。

ほとんどの保険会社は、保険の中に「免責条項」を入れています。保険加入者に問題があった場合には、保険金を支払わないですよ、ということです。

具体的には、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 被害者にも著しい不注意があった場合
  • 飲酒運転など悪質な法律違反をしていた場合
  • 改造車の場合

免責条項は、他にも細かい事情が挙げられていることがあり、保険会社により異なっていますから、特に注意が必要です。

(4)仕事中や通勤中の事故の場合

保険会社によっては、労災保険との関係から、仕事中や通勤中の事故には適用しないとしていることがあります

3.注意点2:弁護士費用特約を利用しても自己負担が発生する場合

弁護士費用特約を利用しても、保険会社が弁護士費用をすべて支払ってくれず、弁護士費用の一部を負担することになってしまうことがあります。

一部だけとはいえ、出費がないと思ったのに!とショックを受けないよう、あらかじめ、どのような場合に自己負担が生じてしまう可能性があるのかを把握しましょう。

(1)上限額を超える弁護士費用が生じた場合

冒頭で説明した通り、2019年現在の弁護士費用特約で保険会社が支払う弁護士費用の上限は、おおむね、どの保険会社も300万円で横並びになっています。

300万円を超えた部分の弁護士費用は自己負担となります。

とはいえ、弁護士費用が300万円を超えるような場合は、(弁護士に依頼した場合)弁護士費用の自己負担分をはるかに超えるほど損害賠償金が増額されるような大けがをされているでしょうから、弁護士に依頼するメリットは十分にあるといえます。

(2)保険会社が弁護士費用の一部をもとから支払わないとしていた場合

上限を超えなくとも、自己負担が生じてしまうことがあります。

保険によっては、弁護士費用特約の内容として、もともと、弁護士費用の一部を支払わないとしていることがあるのです。

たとえば、保険料負担を減らす代わりに、弁護士費用の一定金額を必ず自己負担してもらうという内容になっていれば、保険会社は、その自己負担額を支払ってくれません。

また、金額ではなく、項目を除外する場合もあります。
法律相談の費用は支払うが、それ以外の弁護士費用の支払いはしないという保険もあるようです。

保険約款の細かい内容は、保険会社や個別の契約で異なるでしょうから、あなたが加入している保険の内容をよく確認することが大切です。

(3)保険会社が、弁護士からの請求の一部を「弁護士費用」と認めない場合

保険会社が、弁護士費用の総額が約款に定められている上限額を超えておらず、また、約款で支払うとされているように考えられる弁護士費用について、保険会社が支払い義務を負う「弁護士費用」ではないとして、支払いを拒否する場合があります。

分かりづらいことでしょうから、具体例をあげましょう。

実務上しばしば問題になる弁護士費用が、「実費」と呼ばれる事件処理の経費にあたるものです。実費の典型例は、裁判所への交通費や、書類の郵送費用・切手代です。

ところが、どのような費用まで「実費」として弁護士費用に含めるかということについて、保険会社は狭い解釈をすることがあります。

つまり、「この費用は実費ではないから、弁護士費用に含まれない。だから、保険会社が弁護士費用特約に基づいて支払う必要はない」と主張してくることがあるのです。

しかし、交通事故の事件、ひいては、保険会社との交渉の経験が豊富な弁護士ならば、そこで簡単には引き下がることはありません。しっかりと、保険会社の担当者と交渉します。
保険会社内部の基準の解釈について、担当者を説得できれば、支払をしてもらえることがあります。

しかし、担当者が折れなければ、保険会社が弁護士費用として支払いを認めなかった部分を、自己負担することになる可能性は、残念ながら「ない」とは言えません。

(4)保険会社と弁護士との間で金額に争いが生じた場合

場合によっては、弁護士費用の金額自体について、保険会社と弁護士との間で争いが生じてしまうこともあります。

念のため、契約の際に弁護士に一言確認しておきましょう。

4.注意点3:事前に保険会社に連絡をする

一般的に、どの保険会社の弁護士費用特約でも、弁護士費用特約を利用するには、事前に保険会社に連絡をして、利用について承認を得なければならないとされています。

保険会社が承認を拒否することはまずありません。しかし、事前の連絡をしなければ、上記で説明したような保険会社と弁護士との間の弁護士費用に関する主張の対立を招くおそれが高くなります。

弁護士と契約を結ぶ前、そして、弁護士費用が支払われる前の2回に、保険会社に事前に連絡をしておきましょう。あとは、保険会社と弁護士が費用に関して協議をします。

完全に自己負担のリスクを無くすことができるとは限りませんが、弁護士費用の計算方法や範囲について、事前に調整ができますから、自己負担リスクを大きく下げることができます。

5.弁護士費用特約を利用する場合は弁護士に相談を

弁護士費用特約はメリットが多く、デメリットのない、使うに越したことのない制度です。しかし、特約の内容は複雑で、また、保険会社次第で自己負担が生じるリスクがあります。

交通事故事件の経験が豊富な弁護士に相談してそのサポートを得ることで、弁護士費用特約のメリットをより確実に、大きなものにすることができる可能性が高くなります。

泉総合法律事務所では、これまでに多数の交通事故被害のご相談をお受けしており、解決実績も豊富にございます。

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