交通事故

保険会社からの治療費の打ち切りに応じると大きな損をする可能性!?

保険会社からの治療費の打ち切りに応じると大きな損をする可能性!?

交通事故による怪我で非常に多いのがむち打ち症ですが、むち打ち症の場合、治療開始から3カ月程度経過すると、相手方の任意保険会社から、「治療費の支払いを打ち切る」と言われてしまうことがあります。

保険会社からこのように言われた場合には、治療をやめないといけないのでしょうか?また、もし治療を続けると、健康保険を利用せずに自分で高額な治療費を立て替えなければならないのでしょうか?

以下では、治療費の打ち切りへの対処法を解説します。また、治療費の打ち切りの目処にされやすい3カ月間通院した場合と、6カ月間通院することができた場合のむち打ち症の慰謝料相場の違いもご紹介します。

1.なぜ治療費を打ち切られるのか

交通事故による怪我の治療費は、事故の相手方が支払うものです。

自動車は自賠責保険に加入していますので、上限額までは、まず自賠責保険によって補償されます。

もっとも、自賠責保険は、直接医療機関に対して治療費を支払う対応はしてくれません。そこで、登場するのが、任意保険会社の「一括対応(一括払い)」です。

(1) 任意保険会社の一括対応とは

一括対応とは、本来は別個のものである「自賠責保険」(すべての自動車が加入することを法律で義務付けられている強制保険。最低限の損害を補償)と「任意保険」(加入するかどうかを任意に決めることができる保険。自賠責保険によりてん補される部分を超える部分を補償の対象とする)とについて、手続の二度手間を省くために、任意保険会社が、被害者との関係において、自賠責保険から支払われるべき分をも含めて一括して支払った後、自賠責保険会社に対して自賠法15条の規定に基づき自賠責保険の保険金の支払を請求するという取り扱いのことをいいます。

つまり、自賠責の上限額である120万円を超えるまでの治療費は、自賠責保険の保障の範囲なので任意保険会社は関係がないはずなのですが、その分も含めて、任意保険会社が負担してくれるという取り扱いサービスです。

この取り扱いをする場合、任意保険会社が入通院先の医療機関に対して治療費を直接支払ってくれますので、被害者は医療機関の窓口で治療費を支払う必要はありません。

(2) 打ち切りを打診されるのはなぜか

任意保険会社が、治療費の支払いを中止する(治療費を打ち切る)ということは、この一括対応をやめることを意味します。

任意保険会社は、損害賠償金を支払う立場ですから、その金額をできるだけ低くおさえたいと考えます。通院期間が短縮されれば、その分、治療費はもちろん慰謝料などの金額も低くなりますので、保険会社としては、事故からある程度の時期になると、治療の終了時期を独自に判断して、早期に治療を終わらせ損害賠償金の額を抑えようとするのです。

2.治療の打ち切りを打診されたら

治療を続けるには?自己負担になる?

まだ治療を続けたい状態であるにもかかわらず、治療費打ち切りの打診にそのまま応じて治療をやめてしまうと、必要な治療が受けられなかったり、慰謝料などの得られる損害賠償金が減ってしまったりといった問題が起こります。

また、保険会社は、もう治療の必要はないとの主張のもとに、治療費の打ち切りを伝えてきます。

本来、治療の必要性を判断するのは、保険会社ではなく主治医です。主治医が、医学的見地から治療を継続する必要がある(まだ症状固定の時期に達していない)という判断を示しているのであれば、当然、治療は続けるべきなのです。

ですから、打ち切りと言われたからといってすぐに応じてしまうのではなく、できる限り治療を続けられるように対処すべきです。

具体的にできることは、次のようなことです。

(1) 保険会社と交渉する

まずは、保険会社と交渉をして、打ち切りの判断を変えてもらうことが考えられます。

主治医に相談して、治療の必要性があることを記した診断書などを作成してもらい、それをもとにして保険会社に治療を継続したい旨を申し入れるのです。

弁護士に依頼すれば、弁護士が代わって、保険会社と交渉してくれるでしょう。

(2) 一旦自分自身で立て替える

治療費には健康保険が利用できる!

保険会社が治療費打ち切りの方針を変えないような場合でも、主治医がまだ治療継続の必要があると判断しているのであれば、治療は続けるべきです。

もっとも、保険会社が一括対応を注視して、治療費を医療機関に支払ってくれないようになると、自分で治療費を立て替えて支払わなければならにことになります。

このような場合には、健康保険を使うようにしましょう。

交通事故による怪我では健康保険は使えないと思われている人も多いのですが、それは誤解です。旧厚生省の通達においても、交通事故では健康保険が使えないというのは誤解であるということが明言されています。

自由診療のままでは、治療費はかなりの高額になるのが通常です。健康保険を使えば、窓口での負担を少なくすることができますので、自分で立て替えなければならなくなった場合には、健康保険を使うことをおすすめします。

なお、交通事故による怪我の治療で健康保険を使う場合には、「第三者行為による傷病届」など保険者が指定する必要書類を保険者に提出する必要があります。

3.入通院慰謝料と後遺障害慰謝料

交通事故による怪我の場合に請求することができ得る慰謝料には、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2つがあります。

(1) 入通院慰謝料

「入通院慰謝料」は、交通事故で負った怪我の治療のための入院や通院によって被害者が被った精神的苦痛に対する慰謝料です。

入院や通院の期間が長くなれば長くなるほど精神的苦痛は大きくなると考えられていますので、基本的に、期間が長くなるほど、入通院慰謝料の金額は大きくなっていきます。

(2) 後遺障害慰謝料

これ以上一般的な治療を継続してもなかなかよくならない状態になった後に残ってしまった症状(後遺障害)に負ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料を、「後遺障害慰謝料」といいます。

後遺障害慰謝料の金額は、一般的に、後遺症の程度によって定められた「等級」(14級から1級まであります。)ごとに決まります。

(3) 慰謝料金額の基準

慰謝料金額の基準には、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士(裁判)基準」という3つがあります。

自賠責基準とは、「自賠責保険」(「自動車損害賠償責任保険」)において、国が定めた支払い基準です。自賠責保険は、被害者に必要最低限の損害賠償を行うためのものであることから、その基準額は低く設定されています。

任意保険基準は、各任意保険会社が示談金を提示する際に用いる基準のことをいいます。それぞれの保険会社が独自に設定していますので、保険会社によって異なります。

公開されているわけではありませんので、ここで明確な基準を示すことはできませんが、示談金を支払う側が自ら設定している基準ですので、これも低い基準額になっていることがほとんどです。

以上の基準と比較して、一番金額の高い基準が、弁護士(裁判)基準です。弁護士が相手方に損害賠償請求を行う場合に用いる基準で、具体的な金額は、日弁連交通事故センターが発行する「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(「赤い本」と呼ばれます)という書籍に示されています。

裁判所における判断の傾向を踏まえて作成された基準ですので、訴訟になった場合にもこれに近い金額が認定されることが多いです。

4.むち打ちの慰謝料相場

それでは、むち打ちで3カ月通院した場合、または、6カ月通院した場合の慰謝料の具体的な金額の相場はどれくらいなのでしょうか。

(1) 治療期間3カ月の場合の慰謝料相場

①入通院慰謝料

自賠責基準

自賠責基準において、入通院慰謝料には次のような基準があります。

実通院日数×2、あるいは、治療期間のどちらか少ない方の日数に「4,200円」をかけた金額を慰謝料とする

これに従って計算すると、通院期間が3ヶ月で、実際の通院日数が50日の場合には、90日×4,200円で、37万8,000円となります。

もし、実通院日数が60日であれば、30日×2(60日)の通院日数の2倍の方が採用されて、30日×2×4,200円で、25万2,000円となります。

弁護士基準

入通院慰謝料を、赤い本に掲載されている表(別表Ⅰ、別表Ⅱ)に、入院および通院の期間を当てはめて算定するのが、弁護士基準です。

なお、2つの表は、怪我が“むち打ちなどの他覚症状のない場合や軽い打撲・挫創の場合”と、“それ以外”との場合によって、使い分けられます。 

むち打ち症の場合に使われる別表Ⅱに、3カ月の通院を当てはめると、入通院慰謝料は53万円になります。

もっとも、通院期間について、別表Ⅱの基準では、「通院が長期にわたる場合は、症状・治療内容・通院頻度を踏まえ、実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。」とされていますので、できるだけ間をあけずに通院するように注意する必要があります。

②後遺障害慰謝料

結論から言うと、むち打ち症で通院期間が3カ月の場合に後遺障害慰謝料を請求するのは困難です。

後遺障害慰謝料を請求するためには、通常、自賠責保険制度において、後遺障害等級認定を受ける必要があります。しかし、むち打ち症で後遺障害等級認定を得るためには、少なくとも通院期間が6カ月以上である必要があるといわれているのです。

つまり、治療期間が6カ月に達しないうちに、保険会社からの治療費の打ち切りに応じて治療を中止してしまうと、後遺障害慰謝料を請求できなくなる可能性が極めて高いということになります。

後遺障害慰謝料が得られるのと得られないのとでは、受け取ることができる損害賠償金の総額が大きく違ってきますので、治療費の打ち切りに適切に対処することはとても大切なのです。

(2) 治療期間6カ月の場合の慰謝料相場

①入通院慰謝料

自賠責基準

先ほど説明した基準に従って計算します。

例えば、通院期間が6カ月(180日)で、通院日数が50日の場合、50日×2=100日の方が少ないので、50日×2×4,200円で、慰謝料金額は、42万円となります

弁護士基準

先ほどのように、赤い本の別表Ⅱに当てはめて算定しますと、原則、むち打ちで6カ月通院した場合の入通院慰謝料の相場は89万円になります。
(通院頻度が非常に低いような場合には、通院期間ではなく、実通院日数の3倍が採用されることもあります。)

上で計算した通院期間が3カ月の場合と比較すると、だいぶ金額が大きくなりました。保険会社からの一方的な打ち切りに屈することなく治療をできるだけ長く続けることの重要性が分かっていただけると思います。

②後遺障害慰謝料

自賠責基準

自賠責基準は、自賠法施行令別表Ⅰ(介護を要する後遺障害に適用)と自賠法施行令別表Ⅱに定められています。これらの表においては、後遺障害等級の等級ごとに慰謝料の金額が定められています。

むち打ち症で認定される可能性のある等級は、14級12級です(12級が認められることは稀です)。

14級の場合の慰謝料は、32万円です。12級になると、93万円になります。

弁護士基準

赤い本でも、等級ごとに慰謝料金額の基準が記載されています。

具体的な金額は、14級の場合は、110万円です。12級の場合には、290万円となります。

5.治療を打ち切られそうになったら弁護士に相談を

このように、治療の必要があるにもかかわらず、保険会社の打診に応じて治療を中止してしまうと、適正な賠償金を受け取ることができなくなってしまいます。
通院慰謝料の金額が下がってしまうことに加えて、後遺障害等級認定も獲得できなくなる可能性が高いですので、損をしてしまう金額も小さくありません。

早いうちに弁護士に相談して、治療の受け方のアドバイスを受けたり、保険会社との交渉を代行してもらったりすることで、そのような結果を避けることができます。

一度治療をやめてしまうと取り返しのつかないことになってしまうことがありますので、任意保険会社に治療の打ち切りを通告されたら、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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