債務整理

自己破産をすると海外旅行はできなくなるの?

自己破産をすると、生活に多少なりとも制限が発生します。
その1つが「旅行」です。海外旅行を含む旅行に一定の制限がかかります。

しかし、果たしてどの程度の制限がかかるのでしょうか?
海外旅行はできるのか?国内旅行のみなのか?それとも日帰り旅行だけなのか?あるいは旅行は一切できないのか?

旅行が趣味の人はもちろん、そうでない人にとっても旅行の可否が問題になる可能性はあります。
例えば、海外に家族が住んでいる人や、友人が海外で結婚式を挙げる予定がある等、旅行の制限で困ることもあるはずです。

何かあったときに困らないように、自己破産と旅行の関係を確認していきましょう。

1.そもそも自己破産とは

自己破産は、裁判所を介して行う債務整理です。「破産」と「免責」という2つの手続から構成されています。

「破産」とは、一定以上の自分の財産を処分してお金に換え、それを債権者への弁済に充てる手続です。

財産を処分するとは言え、マイホームやマイカーなど高額なものを除いた一定の金額以下の財産は手元に残せますし、現金も99万円まではそのまま持ち続けることができます。
また、さしたる財産がない場合は特に財産を処分しなくても問題なく手続が進みます。

財産を処分せずに済む破産手続を「同時廃止」と言いますが、自己破産の多くはこの同時廃止となっています。
つまり、多くの自己破産は財産を処分せずに行えるのです。

一方「免責」とは、借金を帳消しにする手続です。これが認められて初めて借金をゼロにできます。

「破産によって自分の財産を処分して債務の弁済に最大限の努力をしたのだから、これ以上の返済は免除してあげよう」という考えがあると思ってください。

なお、大抵の借金は免除されますが、滞納している税金や破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務等は免除されませんのでご注意ください。
破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務とは、例えば他人の物を盗んだ場合や会社のお金を横領した場合の損害賠償債務などを言います。

2.自己破産した後の旅行

自己破産の内容を知ったところで、本題の自己破産と旅行について確認していきます。

(1) 破産後の旅行(国内・海外)は可能

自己破産をした場合、その後旅行はできるのでしょうか?

答えは「イエス」です。問題なく旅行ができます。
日帰り旅行、泊りがけの旅行、国内旅行、海外旅行のどれでも可能です。

自己破産の手続中は制限がかかりますが、制限を受けるのは「破産手続開始決定」から「破産手続終了」までの期間です。
同時廃止の場合は問題になりませんし、そうでない場合でも破産手続終了後は自由に旅行ができます。

また、「自己破産をすると戸籍やパスポートにそのことが書かれる」「そもそもパスポートを発行してもらえなくなる」「海外旅行に行けてもカジノには入れなくなる」といった噂は事実ではありません。

カジノについてはその国や対象となるカジノの決まりに従わなければなりませんが、戸籍やパスポートに自己破産したことが書かれることはありませんし、自己破産したことによって不都合な扱いを受けることもありません。

(2) 破産手続き中の旅行について

「破産手続開始決定」から「破産手続終了」までの間は、「裁判所の許可があれば可能」という条件が付きます(破産法37条 居住制限)。
裏を返せば、裁判所の許可を得れば、たとえ海外旅行でも可能ということです。

ある程度正当な理由があれば裁判所は旅行を許可してくれます。
例えば友人の結婚式が海外で行われる、親戚等に会いに行く必要がある等の理由であれば、認められる可能性は高いでしょう。

弁護士に相談すればおおよその見通しを教えてくれるので、事前に確認しておくことをおすすめします。

【引っ越しの制限】
自己破産手続中は、引っ越しにも制限がかかります。これも居住制限の一つです。
居住地を変えると自己破産の手続が煩雑になる等の理由から、こういった決まりが設けられています。
しかし、これも「破産手続開始決定」から「破産手続終了」までの期間だけです。破産手続終了後は自由に引っ越しができますし、同時廃止の場合は問題にもなりません。多くの人は安心していいでしょう。

3.自己破産による制限や悪影響

最後に、自己破産のリスク、デメリットを、財産の処分・旅行・引っ越しの制限以外で見ていきましょう。

(1) クレジットカードを作れず、借金もできなくなる

自己破産をすると5~10年はクレジットカードを作れなくなりますし、既に持っているカードも使えなくなります。
また、住宅ローンや自動車ローンを含む借金もできなくなります。いわゆるブラックリスト状態となるのです。

これは自己破産の情報が各金融機関や貸金会社、カード会社で共有されるため、審査に落ちてしまうことが原因です。
しばらくは借金せずに生活し、カードを使いたければ審査のないデビットカード等で代用しましょう。

(2) 生命保険の解約

掛け捨てでない積立型の生命保険には、解約返戻金というものがあります。

解約返戻金も金額によっては破産手続で処分される対象に含まれるので、自己破産をすると生命保険は解約しなければならなくなる可能性があります。

(3) 一定の職業に就けなくなる

自己破産をすると就けなくなる職業があります。これを資格制限と言います。

例えば、弁護士や司法書士等の士業、貸金業者、警備員、生命保険募集人といった職種です。
上記の他にも様々な職業が該当しますので、自分の場合は大丈夫なのかどうかは弁護士に相談するといいでしょう。

しかし資格制限を受けるのは「破産手続開始決定」から「免責許可決定の確定」までの期間だけです。
多くの場合、数ヶ月から半年程度なので、この期間だけ別の部署に移る等してその仕事に関わらなければ問題ありません。

(4) 通信の秘密の制限

自己破産手続中、申告した財産や借入先に漏れがないからチェックするため、破産者名義の郵便物は破産管財人に転送され、中身を確認されます。

しかし、これも自己破産手続中のみの制限で、同時廃止では問題になりません。また、転送されるのは破産者名義の郵便物だけで、宅配便や、同居人宛の郵便物は転送されません。

4.旅行の制限はほとんどない。不安があれば弁護士へ相談を

ほとんどの自己破産は「同時廃止」による手続きになるため、事実上旅行の制限はありません。
仮に同時廃止とならなかった場合でも、破産手続が終了すれば旅行の制限は解除されますし、制限期間中でも裁判所の許可を得れば問題なく旅行ができます。

とはいえ、自己破産をするとなると、不安なことや気がかりなことが多いかと思われます。自己破産を検討した段階で、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

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