債務整理

個人再生をする際のスマートホン(スマホ)・パソコン問題点

個人再生をする際のスマートホン(スマホ)・パソコン問題点

個人再生手続は、借金などの全ての金銭支払義務、つまり「債務」(債権者から見れば「債権」)を、原則として全て減額することができる債務整理手続です。

借金の返済負担が残る代わりに、裁判所による財産の処分を免れることができます。

もっとも、まったくデメリットがない訳ではありません。自己破産手続で処分される財産相当額以上を返済することが義務付けられていますし、また、裁判所を用いるために、一定の規制も生じます。

ここでは個人再生手続のデメリットが、情報化社会の中で不可欠な財産となっているスマホパソコンにどのように現れてしまうのか、また、その対策について説明します。

1.個人再生手続の基本

個人再生手続は、借金全額を支払えない、つまり、支払不能の恐れのある債務者が、原則3年(最長5年)で借金の一部だけを返済する再生計画を裁判所に認可してもらうことで、返済負担を軽減する債務整理手続です。

再生計画に基づく返済を終えれば、残る借金は原則として免除されます。

再生計画が裁判所に認可されるには、特に債務者が再生計画を履行可能であると認められることが重要です。

履行可能性が認められなければ、再生計画に基づく返済はできませんし、さらに計画に従った返済ができなければ、残る借金が復活してしまいます。

(1)最低限支払わなければならない金額

再生計画に基づいて最低限支払わなければならない金額は、一般的に用いられる手続においては、以下の2つの基準で算出された金額のうち、より大きいほうの金額です。

①最低弁済額

借金の額に応じ、法律が定めている基準額です。

借金の額

最低弁済額

100万円未満

全額

100万円~500万円未満

100万円

500万円~1,500万円未満

借金の1/5の額(100万円~300万円)

1,500万円~3,000万円未満

300万円

3,000万円~5,000万円

借金の1/10の額(300万円~500万円)

②清算価値

清算価値とは、仮に債務者が自己破産手続をした場合に、裁判所により処分され、債権者に配当されると見込まれる債務者の財産の価値相当額です。

この清算価値が、再生計画に基づいて最低限支払わなければならない金額の基準となっているために、個人再生手続では、債権者は、債務者が自己破産手続をした場合以上の損害を受けることはないようになっています。

このことを、清算価値保障の原則と言います。

なお、自己破産手続の配当では、自由財産という債務者の生活のため処分されない財産があるため、裁判所によっては、一定の財産を清算価値に計上しないこともあります。

(2)債権者平等の原則と偏頗弁済

個人再生手続において、清算価値保障の原則と並んで重要となる原則が、債権者平等の原則です。

債権者平等の原則とは、公的機関である裁判所を用いる個人再生手続では、債権者に不公平な扱いをしてはいけないというルールです。債権者平等の原則があるため、全ての債権者を手続の対象としなければなりません。

また、支払不能後に、債務者が特定の債権者にだけ返済することは、偏頗弁済と呼ばれ、禁止されています。

偏頗弁済をしてしまった場合、偏頗弁済の金額が清算価値に上乗せされてしまうため、再生計画に基づく返済額が高額となってしまう恐れがあります。偏頗弁済に充てられた債務者の財産は、本来、自己破産手続では債権者に配当されるべきものだからです。

では、パソコンやスマホについて、個人再生手続ではどのような問題が生じるのか説明します。

2.スマホやパソコンの手続前の売却や譲渡

実際に起こってしまう可能性は低いですが、大きな危険があるため最初に説明します。

清算価値を減少させるために、高額なパソコンやスマホを安易に売却や譲渡すると、清算価値に計上されるはずの財産を隠し、債権者に損害を与えたとして、犯罪になってしまう恐れがあります。

刑罰を科せられる事態にまでならなくとも、債権者を害する悪質な違法行為ですから、個人再生手続をすることが許されなくなりかねません。

手続間にスマホやパソコンを売却したとしても、正直に申告して、その時価を清算価値に含めれば、問題とされないで済むこともあります。

個人再生手続による返済は3年~5年、1か月ごとの支払なら36回~60回の長期分割返済です。

スマホやパソコンが清算価値に含まれるとしても、その時価はスマホの場合せいぜいいって10万円程度、パソコンの場合も少なくとも単体であれば2~30万円程度ですから、よほど大量に高級なスマホやパソコンを持っていない限り、月1万円も返済額は増えません。

個人再生手続前の財産の状態は動かさないことが一番です。安易なパソコンやスマホの売却は控えましょう。

3.個人再生とスマホ

スマホについては、通信料の滞納がなく、また、スマホ本体の代金も完済済であれば、特段の問題は生じません。

問題が生じるのは、通信料の滞納がある場合、もしくは、スマホ本体の代金を分割払いしていて、まだ完済をしていない場合です。

(1)通信料の滞納がある場合

滞納した通信料は個人再生手続による債務整理の対象となってしまいますので、通信料の請求権を減額されてしまった携帯会社は、スマホの契約を解約してしまいます。

かといって、携帯会社だけを手続から除外することは、債権者平等の原則に反するため不可能です。

また、携帯会社にだけ滞納した通信料を支払ってしまえば、偏頗弁済になってしまいます。

そのため、後述する対策をしなければ、にっちもさっちもいかない状況に追い込まれます。

(2)スマホ本体代金を完済していない場合

しばしば、スマホ本体代金の分割払いは、通信料と合わせて請求されているため、実感している人は少ないでしょうが、スマホ購入のために借金をし、分割して返済しているものです。

そのため、スマホ本体代金を完済していない場合、普通の借金同様、個人再生手続の対象となります。

結果、携帯会社に契約を解約されてしまうことなどは、通信料の滞納がある場合と変わりません。

4.解約されないようにするための方法

(1)裁判所の説得

債務者の経済的生活の更生を図るための個人再生手続をしたことで、生活に不可欠なスマホを失ってしまうことは、債権者の利益を考慮する必要もあるとはいえ、本末転倒になりかねません。

そのため少額の支払いについては、裁判所によっては偏頗弁済としないでくれることもあります。

もっとも、債権者平等の原則に反することに変わりはありませんから、上手くいく保証はできません。

この手段を考えるにしても、弁護士に滞納している通信料やスマホ本体代金の残額を正確に報告し、申立先の裁判所の運用や傾向について助言を受けたうえで、検討してください。

(2)他人に代わりに支払ってもらう

第三者弁済と言って、債務者以外の第三者が代わりに支払いをすることは、偏頗弁済となりません。

実務上、頻繁に用いられる手段です。大抵の場合は、親族に支払ってもらうことになるでしょう。

同居の家族に支払ってもらう場合、債務者が親族名義で支払っており、事実上は偏頗弁済ではないかと疑われかねないことだけはご注意ください。

5.スマホを解約されてしまった場合

以前利用していた携帯会社とは再契約できません。かといって、他の携帯会社に鞍替えしようにも、ブラックリストに登録されている5年間は、他の携帯会社との契約が出来ない恐れが高いといえます。

個人再生後すぐにスマホを使える手段としては、SIMフリーのスマホを持っていれば、SIMカードの交換が最も楽でしょう。

しかし、現在の日本ではさほどSIMフリーのスマホは普及していません。

そこで、プリペイド携帯が実務上は頻繁に利用されています。

プリペイド携帯は通信料を先払いするものです。そのため、個人再生後すぐでも、問題なく利用できる可能性があります。

6.個人再生とパソコン

(1)パソコンの清算価値

先ほど説明した通り、基本的にスマホやパソコンは、さほど高額ではないため、清算価値に大きな影響は与えないことがほとんどです。

ただし、パソコンについては、高級ノートパソコンでは30万円以上のものもありますし、また、内部のメモリやグラフィックボードなどを増設していれば、その部品の金額も上乗せされてしまいます。

そのため、パソコンに入れ込んでいる方の場合は、清算価値への影響が無視できなくなることがあるかもしれません。

繰り返しますが、だからと言って、パソコンの売却や譲渡をしてはいけません。

(2)パソコンが清算価値に含まれやすい理由

ちなみに、各地の裁判所の中には、自己破産手続で自由財産と認められる財産については、清算価値に計上しないという運用をしている裁判所もあります。

たとえば、東京地方裁判所では、時価が20万円以下である財産は自由財産とされ、清算価値に含まれないという運用がされています。

そのためスマホはほとんどの場合、清算価値に含まれません。

一方、パソコンの場合、本体及び改修パーツなどで20万円の基準を超える恐れがあるだけでなく、外付けハードディスクやモニターなどの付属品も、パソコンと一体のものとして考慮されてしまいます。

さらに、複数のパソコンを持っていれば、全ての時価を合計して自由財産となるか判断されてしまいます。

7.個人再生後もスマホやパソコンを使い続けるには

今や、仕事や日常生活、どのような場面でも不可欠となったスマホやパソコンですが、個人再生手続に伴うデメリットの影響を受けてしまう恐れがあります。

不動産や自動車ほど高額になることは少ないため、清算価値に関しては、極端に心配する必要はありませんが、少しでも清算価値を減らそうとして、他人へ譲渡したり、財産として申告しないで隠したりすれば、最悪の場合、犯罪となりかねません。

実務上特に大きな問題となりやすいものが、スマホの契約解約です。事前の回避策の検討や、事後のプランの準備をしっかりしておきましょう。

泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を個人再生で解決してきた豊富な実績があります。どうぞ、お気軽にお問い合わせ下さい。

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