債務整理

子どもの個人再生で親ができることはある?

個人再生手続は、借金の返済負担を裁判所により大きく軽減できる債務整理手続ですが、実行するにはある程度の経済力が必要になります。
では、子どもが個人再生をする際に、親が何かしてやれることはあるのでしょうか?

ここでは、子どもが個人再生手続をするに際して、親はどのような援助が出来るのかをご紹介します。

1.個人再生手続のための費用を援助

個人再生手続をするためには、それなりのお金が必要となります。

まず、弁護士費用は40万円〜50万円ほどかかります。複雑な手続であるため、どうしても費用が高額になる傾向があります。
また、個人再生委員という裁判所を手助けする役職が選任される場合、その報酬を15万から25万円ほど追加で支払わなければなりません。

全額とまではいかずとも、親が一部を援助し、子どもがより早く手続を裁判所に申し立てることができれば、訴訟や給料差し押さえのリスクを軽減させることができます。

[参考記事]

個人再生の費用は安いのか?具体的な費用と相場を解説

2.子どもの支出の肩代わり

(1) 債権者平等の原則と偏頗弁済

個人再生手続をする際に、意外な落とし穴になるのが偏頗弁済です。

個人再生手続には、債権者を債権額に応じて公平に扱われなければならない債権者平等の原則が適用されます。
債権者平等の原則に反する行為が「偏頗弁済」です。支払不能後に特定の債権者にだけ返済することは偏頗弁済に当たるため禁止されており、万一偏頗弁済すれば、その分清算価値が増加してしまいます。

偏頗弁済の相手方は、一般的な貸金業者や銀行に限らず、債務者に対して金銭の支払いを要求できる全ての人が対象になります。
個人再生では、例え親からの借金といえども、支払不能後に返済すれば、偏頗弁済となります。

支払が滞っている公共料金や家賃、ローンの残っている物品など、個人再生を利用しようとする者が支払をすることは偏頗弁済に当たり、子供は返済することができません。

しかし、子どもが家賃を滞納したまま個人再生手続をしてしまうと、退去を要求されてしまいます。
自動車のローンが残っていれば、自動車を引き上げられてしまいますし、携帯の通信料や割賦払いの代金が残っていれば、携帯を解約されてしまうでしょう。

返済はできないうえに、生活は八方塞がりになってしまう可能性が高くなります。

個人再生をする際のスマートホン(スマホ)・パソコン問題点

[参考記事]

個人再生でスマホやパソコンはどうなる?

(2) 親ができる「第三者弁済」

一方で、親が支払を肩代わりすることは「偏頗弁済」とならず、問題となっている支払をすることが可能となります。

このように本来支払い責任を負っている債務者本人ではない者が、債務者の代わりに支払いをすることを、「第三者弁済」と言います。

第三者弁済は、個人再生手続をしようとしている子どもへの援助の中で実務上最も活用されている、子どもの生活に直結する重要な手段であると言えるでしょう。

【親の援助が偏頗弁済と疑われないために】
第三者弁済が偏頗弁済に当たらないのは、債務者本人が自らの財産から支払をしていないからです。ゆえに、子どもから渡された金銭を親名義で支払っても、実質的には偏頗弁済となってしまいます。
特に親子で同居している場合は、家計を共通にしていることが多いでしょうから、親が支払っても偏頗弁済ではないかと疑われやすい状況にあります。
子どもの財産ではなく親の財産から支払ったという証拠を残しておくようにしてください。

3.再生計画に基づく返済への援助

(1) 再生計画の履行可能性

再生計画の履行可能性については、援助なども考慮してもらうことができます。
財布を同じくしている同居の親子であれば、当然に親の収入も考慮されます。

別居している親であっても、収入を証明する書類や、援助を約束する念書などの提出によって継続的援助が可能であると裁判所が認めれば、親の援助が考慮される可能性があります。

個人再生手続で事前に準備すべきこととは?

[参考記事]

個人再生で提出が要求される家計簿について

また、子どもが住宅資金特別条項を利用してマイホームを維持しようとする場合には、住宅ローンが一切減額されず、再生計画と住宅ローンの二重払いは、子どもにとって大きな負担です。

個人再生では、手続き費用の援助や第三者弁済以外にも、まだまだ親が子どもに援助できることがあるのです。

(2) 給与所得者等再生の場合

個人再生手続には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続があります。

小規模個人再生は、債務整理の効果が大きく利用しやすいものの、債権者に反対されるリスクのある手続です。
他方、給与所得者等再生は、債権者に反対されずに手続をすることができますが、小規模個人再生手続きより再生計画に基づく返済総額が高額になる傾向があり、収入が安定していなければ利用できません。

給与所得者等再生で履行可能性を認めてもらうためには、小規模個人再生よりも、親からの援助が必要になる可能性が高いでしょう。

[参考記事]

個人再生の「履行テスト」では何をする?

また、給与所得者等再生は、長期的には十分な収入があっても、短期的に収入の時期や金額が不安定な場合には、手続を利用できません。

子どもが自営業や歩合給のため収入が不安定といった場合には、親の援助により、子どもの収入の不安定さを補うことで、手続の利用を可能とすることが出来ます。

[参考記事]

個人再生における給与所得者等再生のメリットとデメリット

4.親が子どもの個人再生を援助する場合は弁護士に相談を

子どもが個人再生手続をすることになってしまった場合には、少しでも金銭的援助をしてあげたいと思うのが親の心情でしょう。

しかし、個人再生手続は、裁判所を利用して、全ての債権者に対する借金の一部を長期間分割返済するという複雑な債務整理手続です。個人再生手続への援助を考えるにしても、法律の専門家である弁護士に相談し、リスクを軽減する必要があります。

泉総合法律事務所では、個人再生により借金問題を解決した実績が多数ございます。是非ともお気軽にご相談下さい。

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